過去のコラム

#108 ('15/05/02)

IWA2015報告 前編

写真をクリックすると、拡大写真がご覧になれます。


ニュルンベルク メッセ 入口


毎年3月上旬にドイツのニュルンベルクで開催される、恒例のIWAガンショーが始まると射撃シーズンもいよいよ始まりですね。
IWAが終わると韓国のチャンオンを皮切りに、ワールドカップシーズンがスタートします。
今年のワールドカップはリオ・オリンピックの出場権獲得の為、目が離せないシーズンとなる事でしょう。
ISSFのホームページから、どなたでも閲覧することが出来るので、見どころ満載となること間違いなしと思います。

IWA2015速報をブログでご覧いただいた方も多いと思いますが、IWA期間中の限られた時間の中では、詳細をなかなか報告出来ません。
重複する部分も多いと思いますが、IWA2015速報よりもう少し掘り下げた新製品の紹介をさせて頂きたいと思います。
お時間のある時にご覧いただければ幸いです。

それでは先ず、競技銃メーカーのご紹介から始めさせて頂きます。



【ファインベルクバウ】

M800Xの機関部をウッドストックに乗せた、800Wのプロトタイプが発表になっていました。


ファインベルクバウ M800W


木目を生かしたオイル仕上げのストックと、黒く塗装された2色のストックが存在し、グリップが左右に平行移動できるようになっています。
ただ、グリップが平行移動する機能を組み込むと、今までのグリップのスイングする動きが無くなってしまうような気がしますが、どうなるのでしょうか?
実際に販売開始となった時にはグリップ可動域はきっと、更に改良を加えられている事と思います。
金属で出来ているアルミストックでは、コツンという反動がありました。
しかしウッドストックの特徴は、発射時に発生するハンマーやバルブの動き、銃身のバイブレーションを吸収する特徴があります。したがってウッドストックでは、この反動がどこまで軽減されるかが、とても楽しみです。
ウッドストックの評価が高ければ、今後は800ALUの機関部を乗せたバージョンやスモールボアライフルのバージョンも出てくるかも知れませんね。

リアサイトは現行モデルより小さくなり、アンシュッツ 7002リアサイトのように、スイングが出来るようになります。


ファインベルクバウ 新型リアサイト


M700やM800ALUでリアサイトを前に出していくと、コッキングレバーがリアサイトと干渉してしまい、コッキングが出来なくなってしまうと言うトラブルが発生していました。
そこでリアサイトを小型化することにより、コッキングレバーとリアサイトが干渉してしまうという問題点を、克服することが出来ています。
さてみなさん写真を見て、クリックの形状が変わっているのに気が付きましたか?
M700までのリアサイトのつまみは丸かったのですがM800に変わり、この突起のあるつまみのリアサイトに変更されています。
従来の丸いつまみのリアサイトは1回転12クリックでしたが、突起のあるつまみのリアサイトになってからは1回転20クリックに進化しています。
したがって、より細かいサイト調整が可能となります。

ファインベルクバウのブースの中央には、スペシャルカラーのM800X ALU が飾られていました。


スペシャルカラーのM800ALU


追加料金が必要となりますがファインベルクバウ社では、スペシャルカラーの受注生産を行ってくれるそうです。
写真の色はパープルですが、他にもグリーンやイエロー等の色も指定できるそうです。
試しにどなたか、注文してみませんか?射撃場で目立つこと、間違いなしです。



【アンシュッツ】

アンシュッツ社では20シリーズが販売開始されてら、早25年が経過しています。
そして四半世紀ぶりに、待ちに待った待望の新型スモールボアライフル銃を発表しました。
発表とは言っても、ブース展示等のない完全非公開の形で、我々業者も写真撮影禁止でした。

アンシュッツ社のブースを訪ねた際、外部から見ることのできない完全に閉鎖された部屋に通され、そこで新型スモールボアライフルのプロトタイプを拝見させて貰いました。
拝見させて頂いたと言っても、現物は機関部のみで、まだ銃身すら付いていない状態の完全なる試作品でした。
私もこの新型スモールボアライフルをコラムの記事を書こうかどうしようか、さんざん迷っていたところ、ようやくアンシュッツ社から完成品としての画像が送られてきた。
これでやっと安心して、皆様へお伝えすることが出来ます。

◎新型スモールボアライフル モデル54.30


アンシュッツ モデル54.30


この新型スモールボアライフル、モデル54.30は従来の19シリーズの丸型アクションをベースに、改良を施してあります。
モデル54.30の名前の由来をご説明させて頂きます。
19シリーズの原型となるMatch54(14-19シリーズ)機関部のボルトを30mm短くしたところから、この名称にしたとの事でした。
昭和の時代で射撃をしていた人なら、この説明でピンとくると思いますが、平成の時代の方達には、何がなんやら解らないですよね。
Match54とは、旧型アンシュッツの14シリーズ(またはそれ以前)の1954年以降の販売されたスモールボアライフルの名称です。
このモデルの銃身の上面には「Mod.Match54」と刻印が刻まれていますので、もし身近に古いアンシュッツ社製のスモールボアライフルを持っている方が居りましたら、是非とも銃身を見せて貰ってください。
また機関部に近い、銃身左側に数字2ケタが刻まれていたら、これは製造年の印です。
前回の東京オリンピックの年、1964年製造なら「64」の数字が刻まれております。

それでは新型スモールボアライフルのモデル54.30は、どのように改良されたのか?を、ご説明させて頂きます。


19シリーズと54.30との比較


・ボルト
19シリーズのボルトボディーを、そのまま30mm短くしたデザインになっております。
ボルトボディーが短くなった分、必然的に撃針も短くなり軽くなるので、引き金が落ちてから発射されるまでのロックタイムが、短縮されます。

・装填口
30mmショートボルトになった為、そのまま装填口が30mm後方に移動します。
そのため、腕の短い日本人でも、肩付けを外さずに楽に装填が出来るようになるのでは?と思います。
また機関部上面に開いている装填口を、さらに小さくする事により、機関部全体の強度を上昇させる事に成功しています。
これは、機関部が強化された事により、発射時に発生する機関部のバイブレーションが少なくなり、必然的に命中精度が上昇することを意味します。

・バレルフィッティング
機関部全体の長さは19シリーズと変わらないので、機関部と銃身が接触している表面積が広くなります。
発射時に発生する銃身のバイブレーションを、広くなった接触表面積で抑え込むメリットが出てきます。
19シリーズの銃身は機関部に圧入されていましたが、モデル54.30シリーズは機関部に銃身がねじ込みされています。
この銃身を機関部にねじ込む方式は、センターファイヤーライフルは勿論ですが、スモールボアライフルでも高品質で名高いブライカー社のチャレンジャーライフルや、グリューニヒ+エルミゲール社のレーサーアクションにも採用されている事は、既にご存知の方も多いと思います。
銃身の薬室回りをよく見ると、ボルトヘッドに付いているエジェクターとエキストラクターの爪が入り込む溝が、切り込まれていません。これはまだ、銃身を機関部に取り付ける前の写真ですね。
ねじ込み式銃身ですと、この爪が入り込む溝を正確に切る位置決めが、とても難しくなります。
どの様なスタイルで、爪が入り込む溝を切り込んでくるか?初入荷が楽しみです。

・ヘッドスペース調整
ボルトボディーとボルトハンドルの中間に厚みの違うワッシャーを入れることにより、ヘッドスペースの微調整を行うそうです。
この作業は、アンシュッツ社の技術者により調整されてから、工場出荷されるとの事でした。

・マズルエクステンションチューブ
ボルトが30mm短くなる分、銃口部が30mm後方にきます。
その為、30cm短くなってしまうサイトベースラインを、マズルエクステンションチューブを取り付ける事によって、長いサイトベースラインを確保します。

・ストック
モデル54.30に装着されるストックは、プレサイズストックになり、ブラウンカラーが標準色になります。
モデル54.30機関部の下面寸法はMatch54から19シリーズまで同寸法なので、旧型ストックとの互換性があります。
したがって14-19シリーズの旧型のウッドストックや旧型2213アルミストックにも、モデル54.30シリーズのバレルドアクションを乗せる事が可能になります。

従来のモデル、19及び20シリーズは今のところ、モデル54.30シリーズと共に並行して、生産する予定との事でした。



【グリュー二ヒ+エルミゲール】

毎年、少しずつ進化し続けるグリューニヒ+エルミゲール社。
今年はスモールボアライフルの新型レーサーアクション、レーサー3が発表になりました。


グリューニヒ+エルミゲール レーサー3機関部


比較的に会場が空いている、IWA初日の早い時間に訪問したので、グリューニヒ兄弟の弟で設計担当のダニエルさんが、延々と説明をしてくれました。

・バレル
機関部との接続部分の銃身径を太くて、銃身のバイブレーションを軽減しました。
現在は米国リルジャ社製のバレルを使用してレーサーアクションを販売していますが、今後はリルジャ社バレルのみではなく、他社の米国製銃身でも発射テストを重ねて行くとの事でした。

・ボルト
ボルト操作がスムーズになるよう、細かい部分の改良を施しているそうです。
またヘッドスペース調整用の厚さの違うシムを、標準付属品として2種類(最初からボルトに1枚付いているので、合計3枚)付いていますので、射手の好みのヘッドスペースにセットアップすることが出来ます。
使用する弾によって調整するのも良し。テストの結果、グルーピングの良いシムを選ぶのも良し。
またはボルトハンドルの操作性を重視して、シムを交換するのも良いと思います。
またボルトセーフティーは、ボルトボディーからボルトハンドルの付け根に移動しています。

・ファイアリングピン
トリガーが落ちてから発射するまでのロックタイムを短くするため、ファイアリングピンが軽量化されました。

・ベアリングシステムトリガー
トリガーの動きをよりスムーズにするために、ミニボールベアリングを3個、トリガーユニットに組込まれました。
よって、より安定したトリガーの引き味を、持続させることが可能となります。
このミニボールベアリングシステムは、モリー二社から供給を受けているそうです。

・ベディングブロック
少しだけ大型化することにより、よじれに強くなったそうで、次に紹介するCSストックとのマッチングも良くなったと言えると思います。

・CS(クラシックスポーツ)ストック


レーサー3+CS(クラシックスポーツ)ウッドストック


グリューニヒ+エルミゲール社は、世界でアルミストックが全盛の中、カーボンとアルミストックを融合させた最新のハイブリット3000ストックを開発・販売していますが、時代に逆行しているともとれる、ウッドストックの開発も行っています。
グリップ後方の黒い部分はアルミ製で、ウッド部とアルミ部の接合部には太いボルト3本で接続させているため「折れる事はない」と説明を受けました。
カーボン製のハイブリッド3000ストックを身にまとった近代的なレーサー3は、グリューニヒ+エルミゲール社のイメージ通り、技術の結晶のようなスタイルですが、手に木のぬくもりを感じられるノスタルジックなCSストックに乗ったレーサー3もまた、すっきりとした私好みのデザインでもあります。
ライフル射撃競技人口が世界で一番多い国ドイツでは、CSストック付レーサーが1番人気だそうです。
CSストックは販売開始当初、レーサーアクション用として開発されたため、センターファイヤーのFT300をCSストックに乗せる事が出来ませんでしたが、ようやく今年からFT30専用のCSストックの販売も開始しました。
FT300用CSストックは、旧型のST200を乗せる事も可能です。

・マズルエクステンションチューブ
従来のつなぎ合わせのエクステンションチューブから、アルミ一体物へと変更になりました。
上の写真に付いているエクステンションチューブは標準長ですが、ロングモデルも存在します。
エクステンションチューブの下に、スキャット用レールが付いているのがまた心憎いアイデアです。
これは「スキャットを買って、たくさん練習して、みなさん上手くなりなさい」というメーカーからのメッセージだと思います。

・リアサイト グランプリ


リアサイト グランプリ


従来型はアンシュッツ7002のリアサイトを流用していましたが、レーサー3には新しく自社ブランドのリアサイト、グランプリが付いております。
アンシュッツ7002リアサイトと同じく、傾きを変える事が出来ます。
IWA2015会場でチェックを忘れてしまいましたが、どうもグランプリ リアサイトは写真を見る限り、1回転10クリックのような気がします。

カタログには明記されていませんが、IWA2015会場では、バレル表面にフル―テッド加工を施された銃身の展示もありました。


フル―テッド加工


グリューニヒ+エルミガー社が施すフル―テッド加工は、本当に美しいですね。
ただフル―テッド加工は、溝に火薬カスやホコリが溜まり、手入れを怠るとすぐに錆びてしまう難点があります。



【ブライカー】

ここ数年、50mライフル射撃競技ファイナリストのほとんどの選手が、ブライカー チャレンジャーライフルを使用しており、今や飛ぶ鳥を打ち落とす勢いを感じる、スイスのブライカー社です。


ブライカー チャレンジャー メタリック


ブライカー社は小さなブースでの展示となりますが、見学客が常に絶える事がない、大人気のブースです。
300m用センターファイヤーライフルも展示していますが、やはりみなさんの目当てはチャレンジャーライフルのメタリックとレディに集中していました。

バットプレートの傾きが変えられるティルティングファンクションラチェットが展示されていたので、写真を撮ってきました。


ティルティングファンクション ラチェット


このラチェットは私のように「年に数回しか三姿勢を撃たない」という選手には、これ一つのラチェットで何とか三姿勢ともこなせてしまうのでは?とも思ってしまえます。

左右微調整が出来るファインアジャスト・チークピースにも、ニューバージョンが出ていました。


チークピース ニューバージョン


更に可動域が広がっております。
それにしてもこのグリーンストック、自分では「この色は絶対に選びたくない」と思いながら、あまり違和感なく視野に入ってきます。
少しの追加料金で、いろいろなカラーを選べる楽しみも、ブライカーのメタリックストックならではのサービスとなります。

今やトップブランドに仲間入りしたブライカー社では毎週のようにスイス、ブッチュビルにある工場まで訪問者が来るそうです。
その度に工場見学、テストシューティングを行い、また訪問者と食事や観光にも出かけている様子で、ブライカーさんは多忙な日々を過ごしているようです。
1年前に聞いた納期は「約半年」と聞いておりましたが、現在ではどんどん、納期が遅れています。
もしブライカー チャレンジャーライフルの購入をお考えの方がいらっしゃいましたら、早めにご連絡いただければ幸いです。



【モリーニ】

モリー二のエアピストルは、エレクトロニックトリガーを組み込んだCM162EIが販売開始されてから、すでに15年以上経過しています。
その後、新型と言えばフレームのメッキ素材を変更したCM162EIチタニウムが出たくらいです。
現在のエアピストルのほとんど銃が、反動軽減のためにスタビライザーを装備し、グリップの角度調整等が出来るように改良を重ねている中、モリー二だけが進化が止まり、時代遅れのエアピストルになってしまったような気がします。

ただ、最新式の銃の修理に追われている毎日を送っていると、今となってようやく気が付きます。
他社でトラブルの多い機能がモリー二には付いていない分、モリー二はトラブルの少ないエアピストルになっている、と思えてきたのです。

旧型になってしまったように思われるモリー二のエアピストルですが、まだまだワールドカップやヨーロッパ選手権等での使用率はかなり高いと聞いております。
4月上旬に行われた昌原(チャンオン)のワールドカップでは、男子のエアピストル競技でメダルを独占していました。

さて新製品の紹介ではありませんが、当店ではまだ販売実績のない モリーニCM162EI チタニウムについて簡単にご報告をさせて頂きます。


モリーニ CM162EI チタニウム


アルミフレームにチタニウムフィニッシュを施しただけのように思われるチタニウムモデルですが、通常のCM162EIのハンマー重量約5gから、チタニウムモデルは約3.7gと軽量化されています。
そのためロックタイムが短くなり、また発射時の反動も若干ではありますが、軽減されています。


モリーニ デジタルマノメーター


CM162EI チタニウムに標準装備されているデジタルマノメーターは、ディスプレーを2通りに切り替えが可能です。
一つはシリンダー内の残圧、もう一つは発射弾数です。
でもデジタルマノメーター付のエアシリンダーは、かなり高価なんですよね。



【パルディーニ】

ラピッドファイヤーピストルやセンターファイヤーピストルなど、競技用自動けん銃の分野で評価の高いイタリアのパルディーニ社です。
競技用エアピストルのK12は以前から販売していましたが、パルディーニ社の初エアライフル、GPR1は販売から2年足らずで、かなりの実績が出てきたそうです。

GPR1の大きな特徴は、他社のエアライフルより装填口が後方にあります。


パルディーニ GPR1


これは射撃時に、バットプレートの肩付けを外さずに弾を装填できるという、最大の利点でもあります。
またエアピストルとエアライフルの、双方に組み込まれているスタビライザーシステムは「極限まで単純化させているのでトラブルは起きにくい」との事でした。

エモンズ選手夫妻、男子のカンプリアーニ選手、女子のペトラ選手もパルディーニのエアライフルを使用しているそうです。

パルディーニ社のスタッフから、「アジアの選手はなぜ、みな同じ銃しか使わないの?」と質問されました。
さて、なぜでしょうねぇ?

その理由は、どうしても保守的になりがちな、売り手側にも多少の原因はあるかな?とも思います。
どうもアジア諸国では、パルディーニ社製のエアライフルとエアピストルは、あまり使われていないみたいです。



【ワルサー】


ワルサーLG400E アルテック エキスパート


LG400 アルテック エキスパートにエレクトロニックトリガー付が出ていました。
モデル名は LG400E アルテック エキスパートになります。
写真では見にくいですが、赤いトリガーシューがひときわ目立ちます。

トリガーウェイトは15g−120gの間で調整可能で、またダイレクトトリガーにもセッティングする事が出来ます。
ミニUSBケーブルで充電することも可能なリチャージャブルバッテリーは、LEDライトでバッテリーの残量を確認することが出来るようです。
乾電池式のエレクトロニックトリガーでは、液漏れによる基盤トラブルが多かったのですが、バッテリー式なら液漏れが少なそうで安心です。

ホームページを見る限り「1分の充電で100発発射可能」と書いてありました。しかしこれは200Vと電圧の高いドイツでのお話し。さて100Vと電圧の低い日本では、100発分を充電するのに2倍の2分が掛かってしまうのかな?

後編に続く。





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